インスタレーションアート『空=ku:=』(1999年)

2019年3月6日

なかむーです。

先日8/6に40歳の誕生日を迎えたり、久々のお盆帰省したり
出身大学から取材を受けたりで、ふと過去の事を振り返る機会が多いこの頃。

その取材でわりと詳しく記事にして頂けたので

そのへんの話はコチラで。

http://www.illustration.seian.ac.jp/interview/kazuaki_nakamura.php

滋賀県の成安造形大学という芸大で、映像専攻といいつつも
大学祭に命をかける4年間を過ごしました。
当時からイベントが好きだったんですねえ笑

そんな僕でも卒業制作はやはり映像に関連する作品を残さねばならず。

『空=ku:=』というインスタレーションアートを創りました。

もう17年も前の作品なのか…(遠い目)

滋賀県の大津市にある商業施設「PARCO」に、吹き抜け半屋外の円形スペースがあり
そこに幅8m×高さ4.5mの巨大で真っ白な丸いバルーンを浮かべました。

その真下には同じく幅8mの円形に人工芝が敷いてあり
パブリックスペースを行き交う人々が自由にそこを歩く事ができます。

円形スペースの外周には多数のスピーカーを設置し
カチッ、カチッ、と秒針が時を刻む音が1分間で1周するように聞こえます。

下から白いバルーンを見上げると、丸い枠に切り取られた「空」の写真が3つ
1秒ごとに、カシャ、カシャ、と音を立てながら
スライドショーのように淡々と切り替わります。

その写真の真下に人が立ち止まると、センサーが反応し
静止画像だった空が動画になって動き始めます。
流れる雲、飛び交う鳥、様々な色の青。

いろんな場所で撮影した空の映像、その撮影した場所の「音」
それは街の雑踏だったり、波の音だったり、鳥のさえずりだったり、が
その立ち止まった人の耳に聴こえてきます。

丸い枠に切り取られた空を見上げ、その音を聴く「立ち止まる人」

その「立ち止まる人」が、たまたま3人、3つの「丸い空」の下に揃った時

時を刻む音が消え
3つの丸い枠がなくなり、空はひとつになり
それぞれ聴こえていた音もいつの間にか聞こえなくなり
子どもたちの声で読み上げられる「聖フランチェスコの散文詩」が
いたるところから聴こえてきます。

アシジのフランチェスコの生涯の業績の中から精選された名詞選である
「聖フランチェスコの小さい花(Fioretti di San Francesco)」
に書かれた言葉の中から、子どもたちに「好きな言葉」を選んで読んでもらったものです。

単語、もしくは短い言葉がランダムで聴こえてくるので
それは決して朗読でもなく説法でもない。
しかし、確かに言葉としてメッセージを持ってそこに響きます。

この作品を創るキッカケになったのは
浦沢直樹 著「マスターキートン」の『喜びの壁』という物語。

聖フランチェスコ伝説が残る修道院の壁の保存運動を続けるひとりの男。
そこへ保険調査員として鑑定にやってきたキートン。
そこで出会うひとりの少年。

男も、キートンも、少年も、気づけばそこに集まるたくさんの動物たちも
そこで奇跡を体験します。

空を見上げながら男は言います。

   俺達は一人で生き、一人で死んでいくが
この一瞬、この場にいる生き物だけは
自分の宇宙を抜け出して……同じことを感じている。

この作品を読んだのが高校1年生の時。
授業中にみんなで回し読みしていた漫画の1冊の、たったひとつの物語。

それから何度も何度も読み返し
芸大4年間の集大成として、その時の自分的には「人生の集大成」として
『空=ku:=』という作品を創りました。

僕は『空=ku:=』で何を表現したかったのか。

この広い地球上に3万年前に人類が誕生し(諸説ありますが)
今日に至るまで、たくさんの生命が生まれ、そして死んでいきます。

そんな中、この時代に生まれ、地球上にある日本という国の
ある日ある時、たまたますれ違うだけでも、ものすごい確率だと思うんです。

それだけでもすごい事なのに
他人だった人と、知り合って、仲良くなって、友達になって
お互いを好きになって、結婚して、そしてまた新しい生命が生まれる…
それってもう「奇跡」だと思うんです。

人間、生まれる時も、死ぬ時も、必ず誰もがひとりぼっちで
でも、雨上がりの空にキレイな虹がかかり
たまたまそこに居合わせた人たちが
虹がかかる空を見上げ、きっと同じ事を感じるその瞬間は
「ひとりじゃない」んだな、と。

たまたまその日、大津パルコに来た知らない人同士が
たまたま白いバルーンの下で立ち止まり
見上げた先に起こる変化に気づいた時

さっきまで他人だったその人たちが
ちょっと照れ臭そうにお互い顔を見合わせて
そして、またそれぞれの行き先へと歩き去っていく。

そんな「ちょっとした人生の交差点」みたいな場所を創りたかったんです。

この『空=ku:=』という作品に完成はありません。
世界中の空を切り取って、僕が生涯をかけてやりたいと思う作品のひとつです。

かたちや表現手段は違えど、僕の仕事への想いの根幹はこの作品と同じです。

願わくば、自分が関わる仕事、自分が創り出した世界が

この時代に生まれてたまたま出会えた奇跡を感じる事ができる

ほんの短い時間だけの交差点でありますように。